甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症
このような症状を感じたら、甲状腺機能低下症かも知れません。
当院には、内分泌代謝科専門医の資格を保有している女性医師が在籍しております。少しでも気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。
当院でご受診いただく際は、内科外来のご予約をお取りください。
甲状腺ホルモンは、細胞や組織の新陳代謝を活性化する働きを担っています。甲状腺ホルモンの分泌が増えることによって脳や心臓、胃腸の活動を促進し、また交感神経を刺激することで身体活動を活発にする働きを担っています。
正常な状態の場合、甲状腺ホルモンはその量が一定範囲内に保たれるように、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調整されています。ところがこの調節がうまくいかなくなり、甲状腺ホルモンが低下することを甲状腺機能低下症といい、先に挙げた様々な症状が引き起こされます。
甲状腺機能低下症の中でも代表的な疾患が橋本病です。
橋本病とは、免疫システムが自身の甲状腺を攻撃してしまう自己免疫疾患です。自己抗体が甲状腺を攻撃し、炎症を引き起こします。この炎症により甲状腺組織が徐々に破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下し、甲状腺機能低下症を引き起こします。
橋本病の原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要素や環境要因(ストレス、過労、ヨード摂取過剰など)が関与していると考えられています。また、妊娠や出産といった体内環境の変化がトリガーとなり、発症することもあります。
橋本病は女性に多く見られ、特に30歳台〜40歳台に多く発症する傾向があります。自己抗体が存在することは一部の人に見られますが、実際に甲状腺ホルモンの分泌が低下し症状が現れるのはさらにその一部であり、多くの人は症状が出ずに経過します。
また、橋本病では甲状腺の炎症により甲状腺ろ胞細胞が破壊され、甲状腺ホルモンが一時的に過剰となり甲状腺機能亢進状態となることがあります。そのため、バセドウ病との区別が難しい場合もあります。
橋本病は一度罹患すると完治することはありませんので、定期的な観察と治療が必要です。状態が悪化する前に、定期的な検査を行い異常が見られれば適切な治療を行いましょう。
橋本病の診断には、血液検査と甲状腺超音波検査が一般的に使用されます。
血液検査では、甲状腺ホルモンであるFT3、FT4および脳下垂体から分泌されるTSH(甲状腺刺激ホルモン)の濃度を測定します。橋本病による甲状腺機能低下の場合、FT3およびFT4の値が低下し、一方で脳下垂体は甲状腺ホルモン不足を感知して多くのTSHを分泌します。
また、自己抗体の検査も行います。抗サイログロブリン抗体(TgAb)および抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)の有無を調べ、いずれかが陽性だった場合に橋本病と診断されます。これらの自己抗体は、甲状腺に対して免疫反応を引き起こす重要なマーカーとなります。
甲状腺超音波検査では、甲状腺の形状や組織の状態を評価します。橋本病では甲状腺が大きく腫張し、表面に凹凸が見られ、内部も粗くなることが一般的です。腫瘍の合併が見られる事もあるので腫瘍の有無についても評価します。
これらの検査結果を総合的に評価し、甲状腺機能低下と自己抗体の陽性反応が確認されれば、橋本病と診断されることがあります。ただし、橋本病の症状や検査結果は個人によって異なることがあります。適切な診断と治療のためには、専門医師による診察と詳細な検査が必要になります。当院は、内分泌代謝を専門的に診療できる女性医師も在籍しておりますので、気になる症状や疑いがある場合は、お気軽にご相談ください。必要に応じて、適切な専門医療機関への紹介も行います。
甲状腺機能が正常であれば治療は必要ありません。しかし、甲状腺機能低下症の場合、甲状腺ホルモンの補充が必要となります。一般的には、チラーヂンS®などの飲み薬によって甲状腺ホルモンの補充を行います。
また、橋本病の方はヨード(ヨウ素)の過剰な摂取に注意する必要があります。ヨードを多く含む食品や昆布・昆布だしを過剰に摂取すると、甲状腺ホルモンの産生が抑制され、甲状腺機能低下状態を引き起こす可能性があります。また、頻繁にポピドンヨードうがい液を使用することもヨード過剰につながるため、避ける必要があります。
橋本病の場合、すぐに治療が必要とは限りませんが、炎症が進行し甲状腺ホルモンの分泌量が低下している可能性もあるため、定期的な血液検査を受けることが重要です。また半年~1年に一度、定期的なエコー検査を受けることが望ましいです。甲状腺ホルモンが不足している場合、自覚できる症状だけでなく、血中コレステロール値の上昇を招くことで、気づかないうちに動脈硬化が進行する危険性もあります。
最近では、健診などでの喉の腫れやコレステロールの高値、肝機能の異常などがきっかけで、甲状腺機能低下症の疑いが持たれることも増えています。心配な方は、お気軽に当院にご相談ください。